火火 (ひび)
火と土…陶芸に魅せられた
女の生き方を通じて見えてくる、
潔い強さと生命のカタチ

女流陶芸作家の草分けである実在の人物、神山清子の物語。彼女の陶芸家としての成功へ至る過程、息子の身に降りかかった病との戦いを描いた作品である。
舞台は滋賀県、信楽町。信楽焼の陶芸家の夫を持つ神山清子は、ある日夫に去られ、極貧生活を強いられることになった。2人の子供を育てながらも、念願の穴窯による自然釉を作るために試行錯誤を繰り返す日々…。そうして執念でこれを完成させる。しかし、陶芸家として着々と成果を収めていた矢先、同じ道を歩み始めていた息子賢一が口論の最中に倒れた。病名は白血病。治療のためには骨髄移殖を必要とした。が、適合ドナーを探すのは至難の業だった。母清子は息子の命を救うため、整備のされていなかった我が国の「骨髄バンク」の立ち上げのために尽力することになる。だが…。
熱演である。火と土を相手に演じる、主演田中裕子の意気込みがどのシーンからも伝わってくる。存命の女流陶芸家神山清子の、頑固なまでの、陶芸にかける情熱を、今回の田中は飾ることなく心身を投じて演じきったといえるだろう。また、息子役の窪塚俊介の力みのないようすが一転、発病後に衰弱していく姿は痛々しいまでにリアルだ。その恋人役の池脇千鶴の芯の強さ、清子の師匠を演じる岸部一徳の包容力、清子の妹(おばちゃん)を演じた石田えりのがらっぱちな感じもいい。役者が実在の人物に敬意を表しているのがわかる。全てが調和し、物語が生きている。久しぶりの監督作品だが、高橋伴明のベテランらしい円熟の演出が冴え渡っていた。
また、劇中に登場する陶芸作品がすばらしい。すべて神山が今回の映画のために焼いた本物を使用したというが、陶芸の魅力を伝えることに成功している。
信楽焼の故郷、滋賀県信楽町の、のどかな風景もこの作品の見どころだ。欲を言えば、五感表現の演出が欲しかった。少し平面的。信楽の土地の空気をもっと共有したかったのは私だけだろうか。スタッフや出演者は、おそらく、あの風景の中でのびのびと撮影をしていたに違いないのだ。
さて、神山清子という人物についてである。まっすぐな性格、信念や行動はしばしば衝突も生み、一見すると身勝手で強引な女と受け取れなくもない。生理的に受け付けられない、というような声があるかもしれない。だが、その性格こそが、骨髄バンクの設立のきっかけとなったことを思えば、彼女という人間を受容することもできるだろう。
劇中、心に響いた清子のセリフがある。
「形あるものは壊れる…。でも、心が壊れたら、何も作ることはできない」
正直なところを書けば、前半の「芸術の創造」と後半の「骨髄バンク設立」のストーリーを、一人の女を通じてなんとか着地させ、ギリギリのところでまとめあげた印象が残った。形はややブサイクになったが、強く熱い心は伝わってくる。傑作ではないが、佳作。見て損はない。
1月22日、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、横浜シネマ・ベティで公開、監督:高橋伴明 配給:ゼリアス
■公式サイト
http://www.hibi.cn/
※初日舞台挨拶が新宿武蔵野館で14:10の回にあります。詳細はコチラ!










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