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December 12, 2005

スタンドアップ

アカデミー賞狙いの空気がムンムン!
アメリカ下流社会の病根をえぐり
男社会にパンチ的衝撃を与える作品

※レビュー (鑑賞:完成披露@銀座)
舞台:アメリカ合衆国>ミネソタ州北部
原題:North Country

TSUTAYA online
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northcountry

 オスカーの足音も近づいてきた今日この頃。アカデミー賞前哨戦は既にはじまっているが、いち早くスピルバーグ監督の最新作『ミュンヘン』が、確実との評価を受けたようである。日本では「アカデミー賞ノミネート最有力作品」群の公開が、06年1月に予定されている。実際はこれがアカデミー賞ノミネート?と疑問符な作品もノミネート発表前なら許される。

 さて、『クジラの島の少女』のアカデミー賞外国語映画賞ノミネートで実力を示したニキ・カーロが、アメリカの寂れた鉱山の町を舞台にして、一人の女が差別と戦い、抑圧からの解放を手にする社会派ドラマを引っさげて登場。

 彼女(ニキ・カーロ)お得意の、辺境の地の慣習・体制が抱える問題点、視野狭窄となっていく村社会的コミュニティ、マイノリティ(この作品では女性)の精神構造をうまく捉え、希望の芽を育てても、その傍から摘まれていく、非情な社会の現実をまざまざと描き出す。

 物語はこうだ。クリスマスイブの夜、酒に酔った夫から顔に青あざがつくほどの暴力を振るわれたジョージー・エイムズ(シャーリーズ・セロン)は、既に我慢の限界に達していた。子供を連れて家を出る。

 実家に戻った彼女だったが、父親は、娘の帰宅にも「おまえが悪いのだ」と言う。その原因は、彼女の過去にあった。若くしてシングルマザーとなり、転落人生を歩んだ娘のことを、父親は既に見捨てていたのだ。ジョージーはセクシーな身なりが原因で、男たちから町のアイドルのように扱われ、痴話トラブルの種となる存在でもあった。

 居候の身で、長男と長女の2人の子供を抱え、職を探すジョージー。旧友のグローリー(フランシス・マクドーマンド)の勧めによって、彼女が選んだのは鉱山での力仕事。父親も働く職場である。

 泥と誇りにまみれる仕事ながらも彼女は、初めて仕事らしい仕事をし、家庭を支えられるだけの給料を手にして、目標を持って再び人生を歩もうとしていた。

 しかし、職場は男社会。男から仕事を奪うな!と罵られ、差別用語が投げかけられ、過去に関係を持った男がセックスを強要し、慢性的ないじめや嫌がらせが彼女を苦しめていた。息子にも影響は広がり、いじめの対象となっていた。この状況を改善しようと会社社長や周囲の女同僚に訴えかけても、拒絶される。同僚の女たちですら、「反抗」によって居場所を失うのを恐れていたのだった。

 …遂に彼女は、元弁護士だった男に頼み、訴訟を起こす。が、法廷でも、レッテルの貼られてしまった彼女は罪人のようだった。

 しだいに明らかにされていくのは、彼女を苦しめてきた「村社会」の事なかれ主義と、「男中心」の考え方がいかに彼女を追い詰めてきたのかという、アメリカ社会の抱える病根…。物語の結末は、心にパンチを食らわせるほどの衝撃の真実が明かされ、悲しみの渦で我々を打ちのめすことだろう。

 テーマは地味だが、力作である。『ミスティック・リバー』や『ミリオンダラー・ベイビー』が過去に入賞しているのなら、本作がアカデミー賞にノミネートされてもおかしくはない。テーマからして無視はできないはずだ。

 この作品では、監督のニキ・カーロがアップスケールな視野を持っていることが改めて証明されている。

 寒々とした面白味のない風景、広大な鉱山に建つ煙をもくもくと立てる工場、採掘現場での労働者の群集、なじみの集うパブ、お金があれば入れるちょっと高級なレストランなど、舞台となる土地こそが、この事実に基づくストーリーを生んだということを説得させていく。地方の町が漂わせる排他的な雰囲気がスクリーンを支配し、物語を裏付けているのだ。

 そこに、『モンスター』での怪演が記憶に新しい、主演のシャーリーズ・セロン。比較するに忍びないが、『イン・ハー・シューズ』のキャメロン・ディアスがおままごとに見えるほど、痛々しく悲しく、切実感に満ちている。虐げられながらも働き続ける女性、そして母親を品位を失うことなく演じきっている。脇を支える全ての役者が緩むことなく、重厚でリアル。終盤近く、グローリーの夫カイル役のシーン・ビーンによる、母を避けるジョージーの息子サミーへの語りシーンでは、慈愛深いメッセージがジーンと胸に響いてくる。

 「下流社会」の言葉が暴走している昨今だが、そうした社会性を宣伝プロモーションに加味しながら、「差別」という根本的な問題を投げかける「話題作」になることだろう。

 派手さや新しさはないが、記憶に鮮明に残る作品。差別を感じている女性なら、勇気が与えられる。どんなに傷つけられても、自分のために、愛する者のために立ち上がるべき時がある…スタンドアップ

 久しぶりに優れた邦題だ。(←安直とも)

 これはオススメである。
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スタンドアップ - 映画

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監督:ニキ・カーロ
出演:シャーリーズ・セロン、フランシス・マクドーマンドほか
配給:ワーナー・ブラザース
06年1月、丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー
■公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/standup/

(C) 2005 Warner Bros. Entertainment Inc.

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Comments

楽しませて読ませていただいてます。
私も映画ブログはじめました。
よろしくおねがいします。

Posted by: サマンサ | December 14, 2005 at 03:07 PM

試写会に行ってきました。
あ、そうなんだ、「スタンドアップ」は邦題なんだ。。。
ラストでこの題名が活きてますよねー。
「North Country」より、この映画にはピッタシ!かも。。。
確かに新鮮さの無い映画かもしれないけど、涙もろい私は、もちろん、たっぷり泣いちゃいました!好きです、この映画。

Posted by: 百子 | January 07, 2006 at 07:54 PM

TBありがとうございます。
スタンドアップ!
まるで自分に言われてるようです(^^;)
CMで観るとちょっと軽い雰囲気ですが、
差別問題として結構重い内容だそうですね。
楽しみにしています。
記事はとても参考になりました。

Posted by: まこ | January 09, 2006 at 11:53 AM

こんにちは。
TBありがとうございました!!
って、私の記事は、アンチスタンドアップでだったけれども。。。
うーん、やっぱ救いはなかった気がするなー

Posted by: とけい | January 09, 2006 at 06:30 PM

TBありがとう

Posted by: ニ純 | January 10, 2006 at 04:56 PM

こんにちは、TBさせて下さい。
公開直前で行くかどうか迷ったのですが、行ってよかったです。
シャーリーズ・セロンさんスレンダーなのに骨太な女優さんで、これからが益々楽しみになりました。

Posted by: 駒吉 | January 13, 2006 at 07:38 PM

みなさん仰っていますが邦題が上手いですね。始まってすぐに、これは後半まで退屈だろうと感じて前半は耳だけ集中していました。主人公の父親の演説シーンが印象に残っています。素敵なお父さんです。
試写で観たんですけど、ラストシーンは日本文化に合わないのでカットした方が・・・。折角の感動がちょっと台無しになりました。

Posted by: | January 14, 2006 at 12:29 AM

男たち小学生みたいな精神年齢の低さにうんざり。たかが13人の女性に男の職場奪ってるって馬鹿じゃないのって感じ…。男ってホント馬鹿だよなあと思った。なんかもう不愉快不愉快、な映画でしたよ。でも案外身近にある問題でこういう男が多いんだよね。自分たちがとっても偉いとでも思ってるのか知らないけどさ。家に帰れば奥さんに尻に敷かれてるくせにね。

Posted by: 某 | January 15, 2006 at 08:17 PM

はじめまして。
私も先日「スタンドアップ」観てきました。すごく良い映画だったのに思いの他公開期間が短いのが残念です。
邦題の「スタンドアップ」はセクハラ、DVのキャンペーンから取ったのだと思っていました。米公式サイトにもこちらのキャンペーンが紹介されていましたよ。

Posted by: yumi | January 26, 2006 at 12:30 AM

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